NRGもアカデミー終了、育成撤退3例目
Korea・Americasに続く3例目で、2027年の新制度は育成の受け皿をチームの外へ移そうとしている

chloric · © 2025 Riot Games, Inc. · Michał Konkol / Flickr · via Liquipedia
NRGが8月30日にアカデミー部門の終了を発表した。声明は2027年のVCTの制度変更を理由に挙げている。同じ動きは7月22日のKRÜ Esports、8月1日のGen.Gでも起きており、3か月で3地域のアカデミーが姿を消した。一方でVCT CNは8月26日にクラブ認証の受付を始めている。育成の枠組みが、チームの内側から大会の側へ移りつつある。
NRGは年内に立ち上げたばかりのアカデミーを畳んだ
NRGは8月30日、NRG Academy の終了を発表した。同プログラムは2026年の初めに Maryville University との提携として立ち上がったもので、1年を待たずに閉じたことになる。最後のロースターは選手5人とコーチ2人。輩出した VCT の選手は chloric の1人で、EMEA の Natus Vincere へ移っている。チームとしての最高成績は Challengers North America ACE Stage 3 の4位だった。
来年のVCTの変更には期待している。ただ、その変更はアカデミーロースターを軸に動く余地を狭めるものでもある。今後は大学シーンと人材のパイプラインを支える別の方法を探っていく(NRGの声明)
| 区分 | 名前 |
|---|---|
| 選手 | haeyoday |
| 選手 | renz |
| 選手 | Ange |
| 選手 | geeza |
| 選手 | Shondex |
| ヘッドコーチ | mCe |
| アシスタントコーチ | zelo |
3か月で3地域のアカデミーが消えている
KRÜ Esports は7月22日、KRÜ SPARK の枠組みを縮小した。2人が契約満了で離れ、tkzin・benG・phc・mont1 の4人はメインロースターの候補として育成プログラムに残る形になっている。Gen.G は8月1日、アカデミーの4選手との契約終了を発表した。Gen.G は Korea の主要クラブで最初にアカデミーを手放した例とされ、T1 と DRX のアカデミーは8月1日の時点では続いていた。
クラブとしての目標が Latin / South America の人材を育てることにある点は変わらない。選手の成長を支え、次の段階へ進む機会をつくっていく(KRÜ Esportsの声明)
| 組織 | 地域 | 発表日 | 内容 |
|---|---|---|---|
| KRÜ Esports | Americas | 7月22日 | KRÜ SPARK を育成プログラムへ縮小・4人を残す |
| Gen.G | Korea | 8月1日 | アカデミーの4選手と契約終了 |
| NRG | North America | 8月30日 | アカデミー部門を終了 |
2027年の制度は、パートナー枠を12から8に絞る
Riot は6月18日に2027年の構造を公開している。Americas・EMEA・Pacific のパートナー枠は12から8に減り、China も8枠になる。週ごとに回るリーグ戦は無くなり、シーズンは Kickoff と地域 Cup、Masters、Champions という大会の連続に置き換わる。各地域の Kickoff は12チームで、内訳はパートナー8とオープン予選からの4である。パートナーであることが上位大会の出場を保証しなくなる点が、これまでとの最大の違いになる。
| 項目 | 2026年 | 2027年 |
|---|---|---|
| Americas・EMEA・Pacific のパートナー枠 | 12 | 8 |
| レギュラーシーズン | リーグ戦(Stage 1 / Stage 2) | Kickoff と Cup の連続 |
| 下位からの入口 | Challengers から Ascension へ | オープン予選から Kickoff へ4枠 |
非パートナーのチームに、直接の支払いが用意されている
2027年の設計には、パートナー以外のチームに対する固定額の支払いが入っている。Kickoff や Cup への出場で10万ドル、Masters で20万ドル、Champions で40万ドル、Game Changers Championship でさらに10万ドルである。あわせて、オープン枠やクリエイター系の組織には、スターティング5人のうち3人を維持すればポイントと出場資格を持ち越せる継続規定が用意されている。
| 到達点 | 保証される金額 |
|---|---|
| Kickoff / Cup 出場 | 100,000ドル |
| Masters 出場 | 200,000ドル |
| Champions 出場 | 400,000ドル |
| Game Changers Championship 出場 | 追加で100,000ドル |
China は認証という別の入口を作っている
VCT CN は8月26日から9月16日まで、クラブ認証の2回目の受付を行っている。オンライン審査と、組織と所属メンバーを対象にしたオフライン認証の2段階で、基準を満たさなくなれば認証は取り消される。認証を通ったクラブは全国大会のプロトラックに参加でき、2027年の Ascension へ向けたポイントを積める。上位は Evolution Cup で VCT CN のリーグチームと当たる。China の2027年の Kickoff は、パートナー8にAscension の招待2とオープン予選の2を加えた形になる。
CN地域のクラブに所属する選手全体の質と競技レベルを引き上げ、地域のValorantシーンの長期的な発展に新しい力を注ぐ(VCT CNの説明)
日本では、育成の入口がむしろ開いている
QT DIG∞ は8月1日、VALORANT部門の練習候補生の募集をXで告知した。Gen.G がアカデミーの4選手との契約終了を発表したのと同じ日である。「本気でプロを目指したい」「競技シーンで挑戦したい」人を対象とし、応募はGoogleフォームで受け付けている。同チームは7月27日に VALORANT Challengers Japan 2026 で初優勝し、VCT 2026 Pacific Stage 2 へ進んだばかりで、告知の文面では自らを「日本一位のチーム」と呼んでいる。
ただし QT DIG∞ が使った語は「練習候補生」であって「アカデミー」ではなく、年齢の条件も文面には出ていない。アカデミーを名乗る組織は日本では別にある。ZETA DIVISION は VALORANT ACADEMY 部門を維持しており、公式サイトには選手4人とコーチ2人が載っている。同アカデミーは2026年2月の Challengers Japan Split 1 に出場し、NORTHEPTION Youth などと当たっている。閉じる動きが3地域で続いた3か月のあいだ、日本では枠が畳まれた例が出ていない。
| 組織 | 形 | 直近の動き |
|---|---|---|
| QT DIG∞ | 練習候補生の公募 | 8月1日に募集を告知。7月27日に Challengers Japan 2026 初優勝 |
| ZETA DIVISION | ACADEMY部門 | 選手4人・コーチ2人が在籍。2026年2月の Challengers Japan Split 1 に出場 |
| NORTHEPTION | Youth チーム | 2026年2月の Challengers Japan Split 1 に出場 |
視聴の重心は、いま日本語圏にある
日本の動きが世界と逆を向いていることには、市場の大きさという裏づけがある。Esports Charts の集計では、VCT 2026 Stage 2 の4地域リーグを視聴時間で比べると Pacific が全体の38.9%を占めて最大で、その Pacific Stage 2 でもっとも見られた放送言語は日本語だった。
| 地域リーグ(2026 Stage 2) | 視聴時間 | 占める割合 | ピーク同時視聴者 |
|---|---|---|---|
| Pacific | 20,476,696時間 | 38.9% | 300,222 |
| Americas | 18,674,924時間 | 35.5% | 221,818 |
| EMEA | 12,342,031時間 | 23.4% | 170,966 |
| China | 1,145,065時間 | 2.2% | 23,101 |
| 合計 | 52,638,716時間 | 100% | — |
差はもう一段下、アカデミーや育成チームが実際に戦う Challengers の階層でさらに開く。各地域の直近ステージを並べると、日本の Challengers だけで視聴時間の52.8%を占める。NRG Academy が4位に入った Challengers North America Stage 3 の約3.6倍にあたる。育成の受け皿を維持する費用が、日本では観客の数で説明できる状態にある。
| Challengers 2026(各地域の直近ステージ) | 視聴時間 | 占める割合 | ピーク同時視聴者 |
|---|---|---|---|
| Japan Split 2 | 1,326,231時間 | 52.8% | 43,758 |
| EMEA Stage 3 | 665,159時間 | 26.5% | 39,517 |
| North America Stage 3 | 363,839時間 | 14.5% | 8,908 |
| LAS Stage 2 | 92,473時間 | 3.7% | 4,888 |
| Korea Split 2 | 65,944時間 | 2.6% | 3,343 |
| 合計 | 2,513,646時間 | 100% | — |
ステージごとに期間も放送時間も違うため、厳密に同じ条件の比較ではない。Brazil は集計待ちのため外している。割合は四捨五入のため合計が100%にならない場合がある。なお日本の Split 1(3月19日〜4月16日)は視聴時間4,587,861時間・ピーク154,355で、Split 2 よりさらに大きい。
育成の費用を誰が持つかが動いている
3件の判断に共通するのは、アカデミーという形そのものを続けない選択である。NRG は大学との提携で始めた枠組みを1年持たずに閉じ、Gen.G は選手を手放し、KRÜ は選手だけを残して枠組みを畳んだ。これまでアカデミーは、親チームが下部リーグの席を持ち続けながら選手を育てる手段だった。2027年の設計では、賞金と枠が独立したチームの側に直接渡る。親チームが下部組織を抱える理由は、その分だけ薄くなる。
ただし、Riot がアカデミーロースターを明示的に禁じたという発表は確認できていない。NRG の声明も「余地を狭める」という表現にとどまっている。制度の文言そのものではなく、各クラブがそこから読み取った採算の判断が先に出ている段階だと見るのが妥当である。
そして同じ制度を前にして、日本は逆の方向へ歩いている。北米では NRG が大学との提携を1年持たずに畳み、日本では Challengers を勝ち上がったチームが練習候補生を公募する。世界が育成の受け皿をチームの外へ押し出そうとしている時期に、日本だけが内側に抱えたままでいる。ただしこれは本紙の見立てであり、QT DIG∞ の募集はあくまで1組織の判断である。日本のシーン全体の方針としてどこかが表明したものではない。
最良のチームは、どの段階でも自力でその位置を勝ち取るべきである。すべての試合に意味がある(2027年の設計についてのRiotの説明)
✍️ 本記事は VALOPEDIA編集部による独自記事です。



